はじめに|「無理に決めること」が目的ではありません

「そろそろ実家の片付けや相続について、親と話し合っておきたい……」 そう思いながらも、切り出すきっかけが掴めずに悩んでいる方は多く、実際にある意識調査では、約8割のご家庭で「将来のことやお金・相続について詳しく話せていない」という結果が出ています。
(出典:PR TIMES 意識調査 、一般社団法人終活協議会『相続とお金実態調査2025』 )

こうした話題は、どうしても「子からの提案」になりがちです。
しかし、子ども側の心配や「こうしておくべき」という考えから切り出してしまうと、親にとっては「子どもから指図された」「これまでの暮らしや自分の生き方を否定された」と感じられ、防衛的な反発や感情的な対立に発展してしまうケースが少なくありません。

ここで立ち止まって考えたいのが、「親自身は今、何も困っていない」という本音です。

子ども世代が将来のリスクやトラブル回避に目を向けているのに対し、親の目線や心理に立ってみると、次のような気持ちが存在しています。

  • 「今のままで不自由なく生きていける(慣れ親しんだ現状の暮らしを維持したい)」
  • 「遺言書なんて残さなくても、子どもたちがうまくやってくれるだろう(楽観・先送り)」
  • 「そもそも膨大な選択や手続き、エネルギーのいる面倒な作業は避けたい」

親にとっては「これまでの歩みや、慣れ親しんだ現在の平穏な生活」を守ることが一番の関心事です。

だからこそ、無理に説得したり考えを変えさせようとするのではなく、「今困っていない親の気持ち」に理解を示し、親目線の思いに寄り添って話をしてみることが円滑な話し合いへの第一歩になります。

今回は、親の感情や大切な暮らしを尊重しながら、角を立てずに将来の会話を始めるための具体的なコツをご紹介します。

やまだのひとこと

親に将来の話をしたいけれど、どう切り出せばいいか分からない……」そう悩むことがあるかと思います。
親御さんの「今の気持ち」に寄り添うことで会話はスムーズになります。

うまく想いを伝えるヒントになれば幸いです。

目次

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なぜ「親子だからこそ」将来の話がしにくいのか?

「家族なのだから、将来のことも普通に話し合えるはず」と思いがちですが、実は親子だからこそ、お互いの感情や視点にズレが生じてしまうことがあります。
特別に仲が悪いわけではないご家庭でも会話が進まない理由には、大きく分けて3つの背景があります

相談者

親のために良かれと思って『お母さん、そろそろ実家の荷物や将来のこと考えようよ』って言ったんです。
そうしたら『まだ自分のことはできてる!あんたにあれこれ指示されたくない』って怒られちゃって…。
親子なのに全然大切な話ができないんです。

相談員

実はそれ、当センターにお越しになるご相談者様から一番多く伺うお悩みなんです。
親子関係が悪いわけではなくても、『身内だからこそ素直になれない理由』が双方にあります。

「家族なのだから、将来のことも普通に話し合えるはず」と思いがちですが、実は親子だからこそ生じる独特の感情や心理的ギャップが存在します。
特別に仲が悪いわけではないご家庭でも会話が進まない理由には、大きく分けて3つの背景があります。

1.親側の心理:「自分のことは自分で決めたい」自立心と生活への想い

親としての立場と自立心

親にとっても子どもは何歳になっても子どもです。
「まだ自分のことは自分でできる」「子どもからあれこれ指示されたくない」という自立心が強く働きやすくなります。

これまでの歩みや今の暮らしを否定されたと感じやすい

親自身は「今の暮らしで何も困っていない」と感じているため、子ども側が良かれと思って「片付けよう」「将来に備えよう」と伝えても、「これまでの生き方や現在の暮らし・判断力そのものを否定された」と受け取られてしまいます。
その結果、自分を守るために防衛的・感情的になってしまうことがあります。

「老い」や「死」を意識することへの抵抗感

将来や実家整理・遺言の話は、親にとって自身の「老い」や「死」を直接連想させます。
変化への戸惑いや自身の衰えへの不安から、つい「まだ大丈夫」「縁起でもない」と話を先送りにしてしまいがちです。

2. 子ども側の心理:自分の親だからこそ「変化や衰え」を受け入れにくい

身内ゆえの厳しさと焦り

他人の高齢者であれば「ご高齢だから仕方ない」と優しく見守れることでも、自分の親に対しては「昔はもっとしっかりしていたのに」「なぜ分かってくれないの」と甘えが生じ、感情的・厳しく接してしまいがちです。

視点のズレ(未来のリスク vs 過去と現在の安心)

子どもは「将来のトラブル防止や安全」という未来の視点でリスクを回避しようとしますが、親は「これまで積み重ねてきた歴史や現在の慣れ親しんだ生活」を守る過去・現在の視点で物事を見ています。この見ている方向のズレが、会話を平行線にしてしまう原因でもあります。

3. 親子ならではの関係性:「甘え」と「きっかけ不足」

身内だからこその照れと遠慮のなさ

第三者となら礼儀正しく落ち着いて話せることでも、身内同士では遠慮がなくなり、甘えやお互いの感情が直接ぶつかり合って素直になれないこともあります。

日常の会話・きっかけの不足

普段から離れて暮らしていたり「用事がある時しか連絡しない」関係性だと、相続や実家といった重いテーマを切り出す自然なタイミングが掴めないまま時間が過ぎてしまいます。

事前に話しておかないと起こり得る「現場のトラブル事例」

事前にお互いの意向や情報を共有できないまま万が一のことが起きると、残されたご家族の間で思わぬ負担やトラブルが生じることがあります。
実際の相談現場でよく見られる事例をご紹介します。

事例①:相続人が把握できておらず、手続きが長期化

親御さんが亡くなった後、戸籍を出生から死亡まで遡って集めて初めて「前妻との間の子どもがいた」「認知した子がいた」と判明するケースがあります 。
相続人の特定(相続人調査)に多大な時間と労力がかかり、話し合いを始めるまでに数か月以上を要してしまいました。

事例②:兄弟間での連絡が取れず(音信不通)、協議が進まない

長年疎遠だった兄弟・姉妹と連絡が取れず、書類への署名・押印が得られないために、実家不動産の名義変更や口座手続きが完全にストップしてしまったケースです。

事例③:「私ばかり介護してきたのに…」という感情のすれ違い

「自分ばかりが親の同居や介護の負担を負ってきた」という思いがある一方、介護に関わらなかった他の兄弟と同等の分け方になることに強い不満が生じ、話し合いがこじれてしまうケースも少なくありません。

💡法的・税務上のポイント(不動産・預貯金・相続税)

事前に方針が決まっていない場合、不動産や預貯金の分け方は相続人全員による話し合い(遺産分割協議)で決めることになります。

  • 預貯金口座の凍結と「預貯金払戻し制度」
    「口座が凍結されると一切お金が引き出せない」と不安に思われる方も多いですが、法律上、葬儀費用や当面の生活費に対応するための制度が用意されています 。
    法務省の定める『遺産分割前の預貯金払戻し制度』により、家庭裁判所の判断を経なくても、1つの金融機関につき上限150万円(一定の計算式による)までは、各相続人が単独で払い戻しを受けることが可能です(参照:法務省「遺産分割前の預貯金払戻し制度」)。
  • 不動産の名義変更(相続登記)の義務化
    実家などの不動産を放置しておくと将来的な売却や活用が難しくなるため、早めの登記手続きや情報整理が必要です。
  • 相続税の基礎控除額の把握
    実家や預貯金などの総額が、国税庁の定める「基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)」を超えるかどうかをあらかじめ把握しておくことも安心につながります。(参照:国税庁「No.4152 相続税の基礎控除」)。

このようなトラブルや後悔を防ぐために一番大切なのは、特別な手続きよりもまず「親御さんが元気なうちに将来について話をしておくこと」が大切です。
当センターでは、法的な手続きを進めるだけでなく、そうしたトラブルを未然に防ぐための「親御さんとの会話のきっかけづくり」から丁寧にお手伝いしています。

角を立てずに「将来の話し合い」をスタートする3つのコツ

角を立てずに「将来の話し合い」をスタートする3つのコツ

親御さんと将来や実家について話し合う際、一番大切なのは「説得しよう」「納得させよう」と正論で詰めることではありません。
一度の会話で何かを無理に決めさせるのではなく、今困っていない親御さんの気持ちや暮らしを尊重しながら、お互いが安心して話せる“きっかけ”を作ることです。

角を立てずに自然な会話を始めるための3つのコツと、そのまま使える具体的なフレーズをご紹介します。

①「説得・指図」ではなく、自分の気持ちを伝える(Iメッセージ)

「(お父さん・お母さんが)〇〇して」「片付けて」という言葉(Youメッセージ)は、親御さんにとって「指示された」「暮らしを批判された」と捉えられ、防衛的な反発を生みやすくなります。

そこで、「私(子ども側)」を主語にした「I(アイ)メッセージ」で伝えるのがポイントです。
「親御さんが困っていないのはわかりつつも、自分が安心するために知っておきたい」という伝え方をすることで、親御さんも責められたと感じず、素直に受け止めやすくなります。

相談者

説得するのが逆効果なら、親には具体的にどう声をかければいいんでしょうか?

相談員

『お母さん、将来のこと決めておいてよ』と説得するのではなく、
『僕たちが将来困らないように、通帳や大事な書類の場所だけ教えてもらえると安心なんだ』というように、ご自身の気持ちとして伝えるのがコツです。
将来の思いを形にする選択肢として『遺言書』や『家族信託』などもありますが(参照:法務省「遺言書について」)
大切なのは制度を使うこと自体ではなく『これからも家族が仲良く過ごすためのメッセージ』として共有することですよ。

  • ✕ NGな言い方(Youメッセージ)
    • 「後で困るから、ちゃんと通帳の場所や遺言書について決めておいてよ」
    • 「床に物を置くと危ないから片付けてよ」
  • 〇 角が立たない言い方(Iメッセージ)
    • 「お母さんたちが今困っていないのは十分分かっているんだけど、私が万が一のときに慌てないように、大事な場所だけ教えてもらえると安心なんだ」
    • 「今の暮らしを変えたいわけじゃなくて、私が安心して過ごしたいから、よく通る場所だけ歩きやすくさせてもらえると嬉しいな」

② 一度にすべてを決めようとせず、小さく始める

「遺言書を完成させる」「実家を一気に片付ける」といった大きな目標を掲げると、作業や決断の負担が重すぎて先送りになりがちです。
また、「今のうちに整理しよう」と焦らせる言葉は、親御さんに自身の「老い」や「死」を急に意識させてしまう抵抗感にもつながります。

まずは「10分〜15分の雑談」「引き出し1つ・よく使う場所1か所だけ」といった小さなステップ(スモールステップ)を重ねることが、結果として一番の近道になります。

  • 具体的に使える一言フレーズ
    • 「捨てるかどうかを決めるんじゃなくて、よく使う物だけ取り出しやすい場所に分けてみない?」
    • 「今日はアルバムや思い出の品を懐かしみながら、少し眺めるだけにしようか」

③ 第三者(専門家)をきっかけや“言い訳”にしてみる

身内同士の直接のやり取りだと、どうしても長年の甘えや遠慮のなさから感情的になってしまうことがあります。
そのような時は、専門家やテレビのニュース、知人の話題などを「会話のきっかけ(言い訳)」として活用するのが効果的です。

「子どもの指示」ではなく「第三者や世間の情報」という形(クッション役)挟むことで、親御さんも客観的に話を受け止めやすくなります

相談者

うちの親は頑固で、家族間の話だとどうしても感情的になってしまいそうで…。

相談員

そういう時こそ、私たち専門家を“言い訳”に使ってください!
『相続センターで無料相談をやってるみたい。一度話を聞きに行ってみない?』と声をかけていただくと、第三者が入ることで親御さんも客観的に話を聞きやすくなりますよ。

  • 具体的に使える切り出しフレーズ
    • 「テレビで『実家の相続トラブル』のニュースを見て思ったんだけど、うちも他人事じゃないなと思って。私も万が一の時にどう手続きすればいいかサッパリ分からないから、念のため教えてほしいんだよね」
    • 「専門家がやってる無料相談会があるみたいだから、一度プロのアドバイスを一緒に聞きに行ってみない?」
    • 「私が自己流で口出しするより、プロにコツを聞いたほうが親孝行になるかなと思って」

話し合いで何より大切なのは、結論を急ぐことではなく「親御さんの今の気持ちを大切に聴くこと」です。
一度にすべてを決めようとせず、焦らずゆっくり、ご家族のペースで小さな一歩を踏み出してみてくださいね。

まとめ|ご家族にあったベストな着地点を一緒に見つけましょう

実家や将来の話は「親を説得して何かをさせるもの」ではなく、
これからの人生を家族みんなで安心して楽しむための前向きなきっかけです。

100のご家庭があれば、100通りの関係性と最適な解決策があります。

当センター(一般社団法人さいたま大宮不動産相続相談センター)では、
行政書士・司法書士・税理士・弁護士などの各専門家と連携し、
単に手続きを進めるだけでなく、親子間の気持ちのギャップを埋める「クッション役」として伴走いたします。

「親になんと切り出せばいいかわからない」
「まずは子どもだけで整理したい」
という段階でも大歓迎です。
どうぞお気軽にご相談ください。

さいたま大宮不動産相続相談センターの関連サポート

遺言書作成サポート
生前贈与・資産承継サポート
初回無料相談(1時間)

よくあるご質問(FAQ)

親が「まだ元気だから必要ない」と拒否されたら?

説得しようとせず「僕たちが安心したいから」と自分の気持ち(Iメッセージ)で伝えるか、専門家の無料相談を口実にしてみましょう。

財産診断をした結果、実家(不動産)しかありませんでした。どう分ければいいですか?

不動産は現金のように分けにくいためトラブルになりがちです。
不動産をもらう代わりに他の相続人に現金を払う方法等、その方法は様々です。ご家庭にあった解決策を専門家がご提案します。

親を連れて行かず、子どもだけで相談に行っても大丈夫ですか?

もちろん大歓迎です。親御さんへの切り出し方や事前準備の段階からご相談いただけます。

相談料はいくらかかりますか?

初回のご相談は1時間無料で承っております。
どんな些細な疑問や不安でも、まずは話すだけでも大丈夫ですので、お気軽にご利用ください。

監修者:山田 隆之

監修者
山田 隆之

一般社団法人さいたま大宮不動産相続相談センター代表理事
MET Design Home株式会社 代表取締役

不動産相続・相続対策・事業承継を専門に、相続相談や不動産売却をサポート。 終活支援や医療・士業との連携にも取り組み、豊富な実務経験をもとに、分かりやすく実践的な情報を発信しています。

主な著書
事業承継成功のトリセツ / 地主のための相続対策 / 相続コンサルティング入門 / そうだったのか! 相続のトリセツ